私たちのボランティアへの思い

Ⅰ コミュニティ形成をサポートし、その先にある自立を目指す

 わたしたちが大船渡市で行っているボランティア活動は、仮設住宅におけるコミュニティ形成を支援し、住人の方々の自立した生活再建を目指すものです。

 では、なぜ仮設住宅でコミュニティが必要とされるのでしょうか。

仮設住宅における課題

自立した生活再建

 復興に欠かせないもの、それは「自立」です。ボランティアにもたれかかった状態では、やがてボランティアがいなくなったときに自らの足で立てず倒れこんでしまうでしょう。復興ボランティアの使命は、復興への全体図と目の前の現実を見比べながら、そこで生きていく人たちの前に進もうとする力を引き出すことにあります。

コミュニティ形成

 主体的なまちづくりに欠かせない自治会は、コミュニティの結束があって機能するものです。しかし入居直後の仮設住宅では、もともとの集落がばらばらになってしまったなど、お隣さんの顔も名前もわからない…と、新しいコミュニティ形成が仮設住宅の課題となっていました。コミュニティの結束力こそが、復興の長い道のりには欠かせないエネルギーとなるからです。

コミュニティの始まりはおしゃべりから

 仮設住宅における課題を解決し、主体的な復興へ向かうための第一歩として、コミュニケーションの機会が必要となります。しかし、仮設住宅ではなかなかその第一歩を踏み出すきっかけがありません。

 そこで、わたしたちはベンチづくり、お茶会・お祭りの開催、コミュニティファームでの作業を通して、住人の方々がおしゃべりを楽しんだりあいさつを交わせるような、交流の場をつくってきました。

  ここで大切なことは、「一緒にやる」ことです。 交流の場としてベンチが必要であれば、買ってくればよいかもしれません。しかし、時間をかけて一緒に作業をすることで、作業自体が交流の場となります。何より、住人の方々が「やってもらった側」ではなく「やった側」、つまり主役となるのですから、ボランティアとの間には上下関係ではなく協力関係が生まれます。現地の方とボランティアが「復興を内側から進める人」と「復興を外側から支える人」という対等な関係で活動することが自立の為には欠かせないのです。

Ⅱ 大学生がボランティアをすることについて

 大学生である私たちが、現地で活動することで何が生まれるのでしょうか。技能も資金もありません。授業があるので長期休暇にしか活動できません。ボランティア活動に対して、迷いや不安が消えることはないかもしれません。

 それでも私たちはもう一度、またもう一度と、大船渡を訪れたくて仕方がありません。大船渡には、自分のことを名前で呼んでくれ「またおいで」と送り出してくださる方々、10歳も年が離れている小さな友達、そして一緒に悩み笑い合った仲間達やスタッフさんがいます。

  この活動を始めたきっかけや動機は人それぞれです。力になりたくて、自分の目で見たかった、ただただ直感に動かされた…「ボランティア」の概念に戸惑いを持っていた人だっていました。ですが、「ボランティアは『相手』がいるから成立するもの」ということさえ忘れなければ、きっかけや動機、ボランティアの意味付けなどの妥当性に囚われる必要は無いのかもしれません。自己満足的な活動に逸れることなく、継続的に適切な支援を行う為に大切な尺度は「相手にとってその活動がどんな意味を持つのか」であり、「自分にとって(=動機や意味付け)」ではないからです。

「学生のあなたたちが一生懸命汗を流しているんだから、わたしもがんばらないとね」

「また遊びにきなさい。楽しみに待っているから」

「ありがとう」

 私たちは東京で暮らす大学生です。私たちは復興の当事者ではなくサポート役です。それでも、私たちが大船渡を訪れることで、世代を超えた交流が生まれたり、それまでには無かったつながりが出来るきっかけになるかもしれない…そう信じて、人と人を結ぶ架け橋になれるよう、悩みながら、迷いながら、ひとつひとつの出会いを紡いでいけたらと思います。